最近呑んだ吟醸酒について
2001年10−12月分
これからの話は消費者(飲み手)という立場で書いていきます。評論家や蔵元、酒屋の立場では見ていません。また、音楽とか味覚とかいう物は大変抽象的で表現が難しいのですが、平易に書きたいと思います。 よく、食べ物店の紹介記事で絶賛している物を食べると、首を傾げたくなる時が多々ありますし、テレビでリポーターが口に入れたとたん「うまい」と発言しているウソ等はここでは、しないように心がけています。
◆月に一度の例会とイレギラーで飲んだ吟醸酒について、ズバリ、どういう酒か皆様への判断基準を書きます。
A;味、B;香り、C;コストパフォーマンス、D;総合評価を、各5点評価(5;最上 4;良 3;まあまあ 2;まだまだ 1;評価外)で表します。 総合評価3−(マイナス)以下ではもう一度買うかと言えば、考えてしまうレベル。2ではタダで贈られても困ってしまうレベル。
私の独断と偏見なしで評価し、E;寸評も入れます。なお、会での評価も、判断基準の参考にしています。また、評価はこの日に飲んだ吟醸酒の味で、次回も酒の性格上、ロットや時間が変れば同じとは言切れませんが、傾向としては、間違ってはいないと思います。
2001年12月29日(土)
1.福田酒造(山形県酒田市) 上喜元 「翁(おきな)」 生酒
原料米、精米歩合;不明 1.8L 2,100円(税別)
A;味3+、B;香り3+、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4
E寸評;地元酒で地元酒田でしか飲めない正真正銘の地酒。普通酒とも本醸造酒とも何にも記述の無い酒、たぶん普通酒ではないかと思われるが。
己を捨てて相手を立てると言うけなげな酒性を持っている。
どんな脂っこい物でも、淡泊な物でも相手に会わせて、相手を持上る。
黒子に徹して表舞台には出てこないが、これなくして舞台は進まない。
吟醸香と吟醸味がさらりと柔らかく口中で広がり嫌みがない。
2.佐久の花酒造(長野県南佐久) 純吟 無濾過生酒 「佐久の花」
原料米;新美山錦 精米歩合;55% 【アルコール分】17〜18度 1.8L @2,500(税別)
A;味4+、B;香り4+、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価4+
E寸評; 丸く甘い出会いが、華やいだ香りと共に吟醸酒ですよー、という雰囲気を上手く作っています。 化粧美人ではありませんが、派手な味わいと香りが飲手を魅了するが、料理が負けてしまいそう。
相変わらず「佐久の花」は美味い。これにハマルと抜出せなくなるような魔力、いえ魅力を秘めている。
3.河野合名(会津若松市) 吟醸・熟成酒 「春高楼」
原料米;八反錦 精米歩合;50% 【アルコール分】15〜16度 【日本酒度】+2 【酸度】1.5 1.8L @3,000(税別)
A;味4+、B;香り4、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4+
E寸評;今年の1月にも飲んでいるが、またのお付き合い。
何時のつき合いにも、優しく迎えてくれる、心の広さは安心して付き合える熟女。
4.神沢川酒造場(静岡県由比町) 純米吟醸 「正雪」 山影純悦・秋上り
原料米;山田錦 精米歩合;50% 【アルコール分】16〜17度 【日本酒度】+3 【酸度】1.3 1.8L \3,360(税込)
A;味4+、B;香り5、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4+
E寸評; 香り、味深く大変バランスした吟醸酒。もどり香は大変すばらしく、何時までも余韻が口中に残る。何時飲んでも安心して飲める蔵の佳酒。
5.瀧自慢酒造(三重県名張市) 純米吟醸 「瀧自慢」 備前雄町
原料米;備前雄町 精米歩合;50% 【アルコール分】16〜17度 【日本酒度】+2 【酸度】1.5 1.8L @3,570(税込)
A;味4、B;香り3+、C;コストパフォーマンス3+、D;総合評価3+
E寸評;斗瓶取りの備前雄町とは別物。
良い素材と素性をしているが、いかんせん酒屋で寝かしすぎ(99.1月製造)て、ひね香が出てしまった。もう少し早く逢えたらどんなにいい女であったか。 可愛い娘でも、嫁に出す潮時を考えなくてはネ。
6.黒龍酒造(福井県松岡町) 大吟醸 「黒龍 八十八号」
原料米;山田錦 精米歩合;35% 【アルコール分】15〜16度 1.8L \10,000(税別)
A;味4+、B;香り4、C;コストパフォーマンス3+、D;総合評価4
E寸評; 辛口の味わいの中、しずしずと味と香りが上がってくる。派手さは全く無く、個性もない。振り向かせるだけの魅力が今一つ無い。知らず知らずの内に盃を重ねるが、もう少し横綱の貫録を示してほしかった。
7.雑賀豊太郎商店(和歌山市友田町) 純米大吟醸 「雑賀(さいか)」 瓶燗火入
原料米;− 精米歩合;−% 【アルコール分】16〜17度 1.8L 会友持込酒
A;味4、B;香り3+、C;コストパフォーマンス−、D;総合評価3+
E寸評; 若いくせに老境の域に入ろうとしている、若年寄です。
造は悪くないと思うのですが、出荷時期の誤りがあります。
昔からの日本酒好きや古酒好きには、違和感がないでしょう。
8.平孝酒造(宮城県石巻市) 純米吟醸 「日高見(ひ・たかみ)」 瓶貯蔵
原料米;蔵の華 精米歩合;50% 【アルコール分】15〜16度 【日本酒度】+2〜+4 【酸度】1.4 1.8L 会友持込酒
A;味5、B;香り4+、C;コストパフォーマンス−、D;総合評価4+
E寸評; 吟醸酒のお手本のような佳い造です。派手な吟醸香は無く、品の良さに誘われ口中で広がる香りと味わい。旨いというハーモニーが奏でられます。爽やかな中に品の良さと旨みが感じられます。
2001年11月24日(土)
1.黒龍酒造(福井県松岡町) 吟醸 「黒龍 いっちょうらい」
原料米;五百万石 精米歩合;55% 【アルコール分】15.5度 【日本酒度】+4.0 【酸度】1.3 【使用酵母】蔵内保存酵母使用 1.8L \2,450(税込)
A;味3+、B;香り3+、C;コストパフォーマンス3+、D;総合評価3+
E寸評; 料理屋で出される吟醸酒だとすると肴を選ばず、自身の個性を殺して相手の肴の持ち味を引き出すのには優れている。反面個性が無く旨味もしゃばしゃば。黒龍の上級酒とはレベルが違う。
2.神沢川酒造場(静岡県由比町) 純米吟醸 「正雪」 生
原料米;山田錦 精米歩合;50% 【アルコール分】17〜18度 【日本酒度】+2〜+4 【酸度】1.2〜1.4 1.8L \3,150(税込)
A;味4、B;香り4、C;コストパフォーマンス4+、D;総合評価4+
E寸評; うっすらと霞が掛かったようにオリが混ざっている。口の中でまとわりつくような旨味。独特な清涼感のある酸味、のどごしの爽やかな香り、協会9号のような派手さは無いが十分な香りを持っている。飲み終わった後になんの跡形も残らない。安心して飲める吟醸酒。
3.瀧自慢酒造(三重県名張市) 純米吟醸 本生 「瀧自慢」 槽(ふね)搾り中汲み
原料米;山田錦 掛米 五百万石 精米歩合;50% 【アルコール分】15〜16度 【日本酒度】+3 【酸度】1.4 1.8L \3,150(税込)
A;味4+、B;香り4、C;コストパフォーマンス4+、D;総合評価4+
E寸評; 旨味がバランス良く、まろやか。純米独特の欠点が無く切れ味が素晴らしい。香りも品良く付いているが、料理をじゃまするほどではない。安心して飲める吟醸酒。この会で一番手が伸びた吟醸酒。
4.井上(福岡県大刀洗町) 純米吟醸 「美田 とろあわ」
原料米;山田錦 精米歩合;−% 【アルコール分】15〜16度 【使用酵母】協会7号 1.8L \3,150(税込)
A;味3+、B;香り4、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価4
E寸評; 山廃仕込みで一番良い状態を”とろあわ”といい、五味の調和された旨味と切れ味が秘められている(裏ラベルより)
山廃独特の臭さと、切れのなさと泥臭さが鼻につく。この山廃独特の味を楽しみたい方には答えられ無いでしょうが、知らずに口にすると「なんだ!これは」となる。
5.初亀醸造(静岡県岡部町) 純米吟醸 「初亀 べっぴん」
原料米;山田錦 精米歩合;50% 【アルコール分】15〜16度 【日本酒度】+3 【酸度】1.4 【使用酵母】静岡HD1、協会14 1.8L \3,605(税込)
A;味4、B;香り4、C;コストパフォーマンス3+、D;総合評価4
E寸評; ごく標準的に作られた優等生の吟醸酒。なにも欠点はないが、長所を見つけるのもなかなか苦労が居る。
6.濱川商店(高知県田野町) 純米大吟醸 「美丈夫(びじょうふ) 雅」 平成10年度醸造
原料米;山田錦 精米歩合;45% 【アルコール分】16〜17度 【日本酒度】+3 【酸度】1.4 【使用酵母】KA−1 1.8L \4,515(税込)
A;味5、B;香り4、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価4+
E寸評; さらっとしたラベルからは想像出来ない個性が詰まっている。3年以上寝かせた古酒であるが、古酒のいやらしさが微塵もなく、「ひやおろしですよ」と云われたら、「そうですか」と言うぐらい清涼感と熟成感がある。色は淡い琥珀色、適度な品の良い吟醸香と、清楚な熟成感 が出しゃばらず奥の深さを感じさす。女性に例えると?と言う問いが聞こえてきますがズバリ「良いとこの熟女でしょう」、付き合いが深くなっても深追いしませんよ。
山本 益博氏のエッセイから抜き書き
世界のトップシェフの仕事にわたしが魅かれるのは、選び抜いた食材に考えの尽くされた調理がしてある料理というものに、栄養ばかりでなく教養も一緒に詰まっているからなのですね。この教養は、料理人の感性、技量、経験、生活信条などによって培われたものだと思うのですが、料理を食べて「おいしい!」と声を上げるだけで終わらない感動があるわけです。
(秋田県 小玉醸造発行、蔵元通信「蔵」拾弐の巻 冬号より ”リレーエッセイ”から抜粋)
この文の料理人(シェフ)を杜氏、料理を日本酒と言い換えて読み直してください。私の日本酒に対してのこだわりが、全て言い尽くされているように思われ、料理も酒も全く変わらないことが分かります。
お酒も最後は感動出来るか出来ないかに掛かっていると思っています。旨いのは当たりまえ、飲み手にどれだけの感動を与えられるかがその酒の価値に繋がるのです。
その感動を求めて、今宵も一献!
2001年10月27日(土)
1..英君酒造(静岡県庵原郡由比町) 雫酒斗びん囲い「英君 生」 秘蔵酒(M-310)
原料米;山田錦 精米歩合;40% 【アルコール分】15.5度 【日本酒度】+5 【酸度】1.2 【酵母】M−310 720ml 4,390円(税込)
A;味5、B;香り4+、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価4+
E寸評; 立ち上る吟醸香に先ずは圧倒(チョット脅かしすぎ)、口に含むと甘く優しく抵抗なしに迎えてくれる。飲み終わった後の戻り香が、ご〜く自然で嫌みがない。酸味がきついのであろうか、口の奥に 違和感が残る。このクラスの値段では当たり前の酒質を持っている。
2.神沢川酒造場(静岡県由比町) 純米大吟醸 「正雪 生」
原料米;山田錦 精米歩合;35% 【アルコール分】15〜16度 【日本酒度】+1〜+4 【酸度】1.3 720ml \4,200(税込)
A;味5、B;香り5、C;コストパフォーマンス4+、D;総合評価5
E寸評; 申し分のないバランスで、どこから見ても品良く爽やか。香りは抑えめでありながら、戻り香は素晴らしい。味も珠玉のように口中で転がり回って、飲み込むのが惜しい。のどごしも爽やかだが、飲み終わった後に至福の時が来る。
3.酒六酒造(愛媛県内子町) 純米大吟醸酒 「思わず絶句!」
原料米;山田錦 精米歩合;40% 【アルコール分】15〜15.9度 【日本酒度】+5 【酸度】1.25 【酵母】協会9号 1.8L 5,340円(税別)
A;味5、B;香り4+、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価4+
E寸評; 純米酒らしからぬ切れのある軽快な飲み口、品の良さ、旨味が詰まっています。
4.酒六酒造(愛媛県内子町) 大吟醸 「夢みる想い」
原料米;松山三井 精米歩合;50% 【アルコール分】15〜16度 【日本酒度】+3 【酸度】1.3 1.8L 3,000円(税別)
A;味4、B;香り4、C;コストパフォーマンス3+、D;総合評価4
E寸評; 味のバランスは見せているが、全体に薄っぺらで味わいが薄い。下の「かげろうの花」 から比べると一段落ちる。しかし、肴との相性を見れば相手を選ばない、万能選手。
5.本江酒造(富山県魚津市) 吟醸酒「かげろうの花」
原料米;山田錦 精米歩合;40% 【アルコール分】15.5度 【日本酒度】+3 【酸度】1.2 【酵母】協会9号 1.8L 2,720円(税別)
A;味4、B;香り4、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価4
E寸評;協会9号の香り立ちは流石。味も整って安心して飲める佳酒。
6.廣田酒造店(岩手県紫波町) 吟醸源酒 無濾過純米 「廣喜 しぼりたて」 生酒
原料米;− 精米歩合;−% 【アルコール分】16〜17度 1.8L 3,000円(税別)
A;味4、B;香り4、C;コストパフォーマンス4+、D;総合評価4+
E寸評; 蔵元から出荷された時は、まだ若くて暴れていた。その為、秋も深まった今日呑んでみる。
正解で、品性良く上品な味わいがある。厚化粧せずとも肌に張りがある、快活ないい女に仕上がっていた。若奥様に乾杯。
(酒名の廣喜の喜は数の七を三つ書いた字が正しい字体です)
番外. 月山トラヤワイナリー(山形県西川町) トラヤワイン2001新酒 「月山山麓」 白
原料;山形県産ぶどう100%使用 【アルコール分】11度未満 1.8L \1,700 (税別)
A;味3、B;香り3+、C;コストパフォーマンス3、D;総合評価3
E寸評;夏の暑さもウソのように秋めいてきました。今年も出ました、トラヤワイン2001新酒 「月山山麓」。これで本格的秋になりました。
ここ数年来のフアンになって、この時期を待ちわびている。普段アルコールと縁の無い人でも飲みやすい。
今年はなんとフルーティーなのであろう。これを”過ぎる”と言います。甘みが過ぎてジュースそのもの。しかしアルコール分があるので、酔います。 呑兵衛としては呑み疲れします。会でもリピーターがいません。来年まで我慢の子。
今回、仕入れた順に冷蔵庫に保管、季節が替わったにも、そのままの温度で呑むことになった。冷え過ぎの欠点がもろに出て、旨味香りの全てが”かじかんで”出てこない。温度が常温近くになって、初めてお酒の持ち味が伸びやかに出てきた。
貯蔵、輸送の目的の低温と、呑むための温度とは違うことは承知していたが、暑い夏のイメージをやはり引きずっていたのであろう。失敗。来月からは常温で呑むことにします。なお、今回の寸評は常温時の評価です。
2001年10月6日
1.千代むすび酒造(鳥取県境港市) 純米吟醸 「千代むすび」 強力 12BY
原料米;鳥取県酒造好適米「強力」 精米歩合;50%
【アルコール分】16〜17度 【日本酒度】+3 【酸度】1.7 【使用酵母】協会9号系 1.8L @いただき物
A;味4、B;香り4、C;コストパフォーマンス、D;総合評価4
E寸評;どんな肴にも合う力強さとバイタリティが身上。9号の香り立ちの良さがあるが、酸味が強く残影がいつまでも残る。
友人から送られた岩魚の燻製(自分で釣って、自分で燻製にしたもの)。この美味さは応えられなかった(酒評風に言うと)絶品で、オール5。その燻製にぴたりと合った。
2.須藤本家(千葉県君津市) 本醸造酒 天乃原「しぼりたて 生酒 」
原料米;− 精米歩合;−%
【アルコール分】19〜20度 1.8L @2,400
A;味3+、B;香り3、C;コストパフォーマンス3、D;総合評価3
E寸評;大変おいしく造られたお酒で、晩酌酒には最高。雑味ガ無く爽やか、適度にバランスされた旨味が 良いが、値段もイイ。2、000円を切っていたら、また逢いたくなるのに。
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