最近呑んだ吟醸酒について
   
      

2002年10−12月分                     

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  これからの話は消費者(飲み手)という立場で書いていきます。評論家や蔵元、酒屋の立場では見ていません。また、音楽とか味覚とかいう物は大変抽象的で表現が難しいのですが、平易に書きたいと思います。 よく、食べ物店の紹介記事で絶賛している物を食べると、首を傾げたくなる時が多々ありますし、テレビでリポーターが口に入れたとたん「うまい」と発言しているウソ等はここでは、しないように心がけています。
 

   ◆月に一度の例会とイレギラーで飲んだ吟醸酒について、ズバリ、どういう酒か皆様への判断基準を書きます。 
 A;味、B;香り、C;コストパフォーマンス、D;総合評価を、各5点評価(5;最上 4;良 3;まあまあ 2;まだまだ 1;評価外)で表します。 総合評価3−(マイナス)以下ではもう一度買うかと言えば、考えてしまうレベル。2ではタダで贈られても困ってしまうレベル。 
 私の独断と偏見なしで評価し、E;寸評も入れます。なお、会での評価も、判断基準の参考にしています。また、評価はこの日に飲んだ吟醸酒の味で、次回も酒の性格上、ロットや時間が変れば同じとは言切れませんが、傾向としては、間違ってはいないと思います。

 


 2002年12月28日(土)  

1.富久千代酒造(佐賀県鹿島市) 特別純米生酒 「鍋島 三十六萬石」  
原料米;−、 精米歩合;55%   【アルコール分】15〜16度  【日本酒度】+4  1.8L  \2,625 (税込)
 A;味5、B;香り4、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4+
E寸評;爽やか、柔らかく淡麗、純真無垢。黙って飲むと新酒らしからぬ風格と落ち着きがあります。既に飲み頃の美味さをプンプンさせています。買い得。
2.楯の川酒造(山形県平田町) 吟醸生 「一雫入魂 楯の川 2003」  しぼりたて
原料米;出羽燦々(さんさん)、 精米歩合;50%  【使用酵母】協会9号系  【アルコール分】16〜17度  【日本酒度】+4 【酸度】1.3  1.8L  \2,625(税込)
 A;味5、B;香り4、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4+
E寸評; 上記鍋島と味わいが似ています。旨さが口中で炸裂します。その後に新酒ですから爽やかな炭酸味がわずかに残ります。畳と○と新酒は新しいのに限る。(古い新酒は無いけれど・・・(^_^; )。これも買い得。
3.佐久の花酒造(長野県南佐久)  夏越し純米 「佐久の花」 
原料米;山田錦  精米歩合;60%  【アルコール分】16〜17度    1.8L \2,835(税込)
A;味4、B;香り3、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価4
E寸評; 『香り松茸 味シメジ』の言い方がありますが、佐久の花は香りが発つので有名です。が、今回のはどこかに置き忘れてきたようです。味はゆったりした旨みの後に丸みのある熟成感が あり、素晴らしいのに・・・。琥珀色に色づいています。
4.麓井(ふもとい)酒造(山形県庄内八幡町)  生もと純米吟醸 「雄町」 無濾過生原酒
原料米;備前雄町、 精米歩合;50%   【アルコール分】16〜17度  【日本酒度】+4 【酸度】1.2  1.8L  \3,150 (税込)
 A;味4+、B;香り4、C;コストパフォーマンス4+、D;総合評価4+
E寸評; これも琥珀色に色づいています。落ち着いた深い味わいは安心してお付き合いが出来ます。旨さが口中で広がりますが、わずかのざらつき感が残ります。そんな事関係なしに美味い。
5.神沢川酒造(静岡県由比町) 純米大吟醸 「正雪 雄町」 生酒
原料米;備前雄町  精米歩合;45%  【アルコール分】15〜16度  【日本酒度】+2   1.8L \4,200 (税込)
A;味5、B;香り5、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価5
E寸評; 正雪の看板娘です。五味がバランスし、何を今更言わなければいけないのでしょう。只黙って飲むのみ。酒の神と雄町と杜氏に感謝しつつ。
6.大澤酒造(長野県望月町) 純米大吟醸  「明鏡止水」  斗瓶囲い
原料米;山田錦、 精米歩合;−%   【アルコール分】16〜17度  【日本酒度】+3 【酸度】1.5   1.8L  \10,200 (税込)
 A;味5、B;香り5、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価5
E寸評; 山田錦の研ぎ澄まされた切れ味。飲み手を突き放すような、澄み切った透明感と酸味。美しさを鼻に掛けた、ぬくもりに欠けた美女です。でも、いい女は徳です。
7.大和川酒造店(福島県喜多方市)   袋吊り 「大和川 純米大吟醸」  無濾過生原酒
原料米;喜多方産・夢の香、 精米歩合;−%   【アルコール分】16〜17度   720ml  差し入れ
 A;味4+、B;香り4、C;コストパフォーマンス差し入れ、D;総合評価4
E寸評;吟醸香と吟醸味はあるが、渋味と雑味が残る。高かったんでしょうね〜。

 


 2002年11月30日(土)

1.清水酒造(埼玉県騎西町) 純米 「亀甲 花菱」  中取り生原酒
原料米;−、 精米歩合;−%   【アルコール分】17〜18度    1.8L  \2,500(税別)
 A;味4、B;香り4、C;コストパフォーマンス4+、D;総合評価4
E寸評;春先に飲んでいます、夏を越してどの様になったのでしょう。
 図太くなって堂々とした押し出し感がある。甘く柔らかく優しくなったが、その分香りが少なくなった。濃厚な料理にも負けずに着いてくるし、この値段では文句は言えない。燗をしてみたが、変化はありません。料理屋さんで出されたらマスターに最敬礼。

 

 

 

2.廣田酒造店(岩手県紫波町) 純米吟醸 「喜平治」 無濾過原酒
原料米;−、 精米歩合;−%   【アルコール分】16〜17度    1.8L  \2,800(税別)
 A;味4、B;香り4、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価4
E寸評;「廣喜」の蔵元で、初代の名前からの命名です。
先月飲んだ墨廼江と同じUVカットフィルムで瓶包装されているのは好感が持てます。だから透明瓶でも平気なのでしょう。今この時期でも酒質の劣化は認められません。感じの良い酸味が清涼感として口中に広がり、優しい美味さが後から押し寄せてくる。これも軽く燗をしてみたが変化は認められませんでした。

初代の名前をラベルにするなら、もうワンランク上の吟醸酒に付けた方が、初代に対して失礼にならない様に思います。

 

3.瀧自慢酒造(三重県名張市) 純米吟醸 「瀧自慢」  備前雄町
原料米;備前雄町、 精米歩合;50%   【アルコール分】16〜17度  【日本酒度】+2 【酸度】1.5  1.8L \3,150(税込)
 A;味4、B;香り4、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価4
E寸評; 春先に飲んでいます、夏を越してどの様になったのでしょう。
 春先の瀧自慢は友人にも配る程良く出来た吟醸酒でしたが、歳の取り方を間違えたようです。三段腹のおばさんです。若い時には超美人だったのに残念です。前にも1年以上寝かせた酒がだめだったように、この蔵元の酒は寝かせるとだめなのかなぁ〜。

 

 

4.大澤酒造(長野県望月町) 純米大吟醸 袋吊り 「勢起(せき)」  生酒
原料米;山田錦、 精米歩合;45%   【アルコール分】16〜17度  【日本酒度】+3 【酸度】1.6   1.8L \3,990(税込)
 A;味4+、B;香り4、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価4+
E寸評;この蔵元「明鏡止水」 の酒を飲むたびに思うのは、そのランクの平均的な価格より何時も低いのです。平たく言えば”安い”。そのおばあちゃん”勢起”さんの名前からきています。
 自分の蔵を支えてきた人の名前を被せるのですから、かなりの期待を飲む者に与えます。しかし、しかし期待が大きすぎた。ドラマの中なら、おばあちゃんと感動の再会となったのでしょうが、おばあちゃんのおしとやかさと口数の少なさに困惑した。が、品良く清楚でてらいが無い上質の吟醸酒に仕上がっています。

 

5.黒龍酒造(福井県松岡町) 純米吟醸 黒龍 「純吟 三十八号」 ひやおろし
原料米;山田錦  精米歩合;50%  【アルコール分】17.5度  【日本酒度】+3 【酸度】1.4  1.8L \3,990 (税込)
A;味4+、B;香り4、C;コストパフォーマンス3+、D;総合評価4
E寸評;春先に飲んでいます、夏を越してどの様になったのでしょう、若奥様。
 ところで、酒も新妻も歳を取るものです。歳を重ねる程に輝きを増す人と、輝きを置き忘れてしまう人が居ます。今、決して悪くはないのですが、この三十八号もあの時が最高だったようです。 人も酒も年取る事の難しさがあるようです。

 

 


 2002年10月26日(土)

 

 

1.墨廼江(すみのえ)酒造(宮城県石巻市)  純米吟醸 「墨廼江 八反錦」  原酒  低温瓶貯蔵
原料米;八反錦、 精米歩合;55%   【アルコール分】16〜17度    1.8L \3,150(税込)
 A;味4+、B;香り3+、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価4+
E寸評; まず、瓶の保護用にビニールの袋入りになっています。よくある高級感を出すものですが、これは実用も兼ねてUVカットフィルムで出来ています。飾りだけでなく蔵元の心配りに暖かいものを感じます。
 角の取れた年頃のお嬢さんでしょうか、人当たりは抜群。個性を前面に押し出さず、かと言って十分な品性と教養は持ち合わせています。純米独特の香りの弱さはどうしようもありません。これは今回の純米吟醸酒全てに言えることです。

 

 

2.舞姫酒造(長野県諏訪市)   純米吟醸 「翠露(すいろ) 備前雄町」 生酒 袋絞り 中汲み
原料米;備前雄町、 精米歩合;49%   【アルコール分】15〜16度  1.8L \2,610(税込)
 A;味4+、B;香り3+、C;コストパフォーマンス5、D;総合評価4
E寸評; 人当たりのいい人妻のごとく、甘く柔らかく飲み手を優しく別天地に誘ってくれる。五味が一体となって静かに押し寄せてくる。油断すると彼女の手に落ちている。長居(飲み過ぎ)をしないように。

 

 

 

 

 

 

 

3.渡会本店(山形県鶴岡市)  出羽ノ雪 「高リンゴ酸 純米酒 Granny Smith」原酒 試験醸造品
原料米;美山錦、 精米歩合;60%   【アルコール分】16〜17度  【日本酒度】−8 【酸度】3.0   【酵母】リンゴ酸高生産性酵母 1.8L \2,940( 税込)
 A;味4、B;香り4+、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価4
E寸評; 山形県企業振興公社が企画、リンゴ酸高生産性酵母を使用した試験醸造酒です。
 標準的(?)な吟醸酒達と比べると異質のグループに入ります。吟醸酒として飲むと上記のような評価になりますが、出し方、言い方を変えれば、提供の仕方(飲み方)を変えてみると評価ががらっと変わります。
 酒の旨みもごく自然に過不足なく備わっています。香りが特徴の青リンゴの清楚な香りが微妙に感じ取れます。厚化粧の女性のようにはブンブン臭いません。日本酒になじみの薄い若い人たちや女性には素直に歓待されるでしょう。赤提灯や料理屋ではまず合わないでしょう。しかし、ホテルのラウンジ、高級バー、航空機内酒、結婚披露宴などで、ワイングラスまたは洒落たゴブレットグラスで出されたら誰も日本酒と気付かずにお代わりをするでしょう。その時は洒落た4合(720ml)瓶に着替えてください。その飲み方をすれば評価はオール5です。

 


4.佐藤仁左衛門酒造場(山形県櫛引町)  純米吟醸 「奥羽自慢DEWA33 ささにごり」  生酒
原料米;出羽燦々  精米歩合;50%  【アルコール分】15〜16度  【日本酒度】+2 【酸度】1.4   1.8L @2、854(税込)
A;味4、B;香り3+、C;コストパフォーマンス4、D;総合評価4
E寸評; 薄濁りの酒質。一夏越して、決してヘタってはいなく、味も香りも柔らかくなっている。さらりとした酸味が喉元を軽快に通り過ぎて行く。味も香りも劣化せず、造りと素性の良さを感じさせます。

 

 

 

5.酒田酒造(山形県酒田市)  純米吟醸 上喜元 「出羽燦々 太古米」 無濾過」」
原料米;出羽燦々、 精米歩合;50%   【アルコール分】16〜17度   1.8L @2、835(税込)
 A;味4+、B;香り4、C;コストパフォーマンス4+、D;総合評価4+
E寸評; 原料米、出羽燦々を意識させないところがいい。過去の酒造米でもこれだけの酒が出来るとの挑戦でしょうが、現在使われている酒造米との差が見受けられない。現代の酒質まで高めた造りを褒めて良いのか、個性を引き出せなかった事を悔やむのか、意見が別れるところでしょう。味は非常に良くできた味わい、香りは弱い。素直に飲めばべっぴんさんです。

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