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<目次>
吟醸酒について <日本酒その裏話・表話>
◇話1. 吟醸酒とは 当頁 ◇話2. 吟醸酒の品質レベル 〃 ◇話3. 至福の時 〃 ◇話4. 吟醸酒の利点 〃 ◇話5. 吟醸酒の例え方 〃 ◇話6. 酒は酔っても味は判る 〃 ◇話7. 味のレベルと好み 〃 ◇話8. 質の違い 〃 ◇話9. 味の悪く変る話・古酒について 〃 ◇話10. ひね香について 〃 ◇話11. 吟醸酒の香りについて 以降次頁 ここで少し余談。 臭いと香りの違いについて ◇話12. 香りの感じ方 ◇話13. ラベルの肩書に惑わされるな ◇話14. 三増酒について ◇話15. 酒米と食用米について ◇話16. 幻の酒米について ◇話17. 今の酒と昔の酒とどちらが美味いか? について ◇話18. アルテン(醸造用アルコール添加)について ◇話19. 甘口と辛口酒 <日本酒度> ◇話20. 樽酒 ◇話21. 濁り酒 ◇話22. 地酒について ◇話23. マスコミの評価はマユツバで ◇話24. 上戸と下戸 ◇話25. 日本酒を愛し、胃を愛す ◇話26. 肝臓を喜ばせつつ酒を飲む ◇話27. 糖尿病の真犯人は? ◇話28. 血圧を下げる酒 ◇話29. お酒はほどほどで長生きする ◇話30. 酒粕について ◇話31. 酒粕料理レシピ ◇話32. 酒風呂 ◇話33. お酒を出す順番 ◇話34. 日本酒の出荷量の現状と推移 ◇話35. 酒造年度と日本酒の日 ◇話36. 鑑評会での味のテスト法について ◇話37. 色の表情について ◇話38. 賞味期限 ◇話39. 無農薬有機栽培の松下米について ◇話40. 本来の用途以外での使い道 ◇話41. 吟醸酒の歴史 ◇話42. お酒のカロリー数 ◇話43. 無濾過酒 ◇話44. お酒で失敗しない方法を教えて下さい! ◇話45. 市販酒類の県別成分等について ◇話46. 酒類課税数量の推移 ◇話47. 清酒業界の現状
吟醸酒について <日本酒その裏話・表話>
これからの話は消費者(飲み手)という立場で書いていきます。評論家や蔵元、酒屋の立場では見ていません。飲兵衛の側から見て、書きます。また、音楽とか味覚とかいう物は大変抽象的で表現が難しいのですが、我に入り込まず、平易に書きたいと思います。
よく、食べ物店の紹介記事で絶賛している物を食べると、首を傾げたくなる時が多々ありますし、テレビでリポーターが口に入れたとたん「うまい」と発言しているウソ等はここでは、しないように心がけています。
前置が長くなりすいません。では始まり始まり・・・。
◇話1. 吟醸酒とは
吟醸酒については、細かい事はおいおい書いていきますが、簡単に言うと、フルーティーな日本酒離れをした、細心の方法で造られた上質な日本酒のことで、日本酒全生産量の数%の出荷量しか有りません。別の言い方をすると、吟味されて醸造された酒。
当然、手作りに近いか、全くの手作りで造られます。その上、芸術作品のように1品1品が吟味されて最上の方法と技術で造られます。ですから、何処どこの地方の日本酒はうまいとか、米(食用米)の産地だから旨いとかは、全く関係がありません。有名画家の出身地とか、有名野球選手、科学者、音楽家の実力も出身地とは関係ないように、彼等彼女達の努力と天性で今があるのを見れば吟醸酒も同じ事です。
別の言い方をすれば、普通、イイ日本酒や素晴しい日本酒だとマスコミで騒がれる日本酒は小中学校の優等生のランクですが、我々がここで言う吟醸酒とは高校生クラスでもなく、大学生のトップクラスでエリートのランクにある日本酒(吟醸酒)を指します。
◇話2.吟醸酒の品質レベル
吟醸酒とラベリングされた物でもピンキリです。まだまだ、ガッカリする吟醸酒の方が多いのです。これは蔵元が吟醸酒を造る方法で造られれば、その様に呼称出来るのです。元来吟醸酒とはその蔵元で研究的または技術向上の為に最上級の日本酒をテスト的に少量造っていました。出来上った結果は最高の時も有ればそうでも無い(まずい)ときもあります。ですから、ピンキリなのです。 技術的に確立された蔵元ではいつも最低限のラインが保証された商品造りがなされています。また、そのラインの向上に向って努力が成されてもいます。
ですから、吟醸酒も値段の高低だけでは質の上下は判りません。高くてもまずい物、安くても良い物、色々あります。
大吟醸と吟醸の違いも、原料米の精米度の違いによるだけのほうが多く、前記の説明と同じように、大吟醸の方が上だとは一概にいえません。蔵元の努力は認めますが、結果まずければ意味がありません。
またその様なまずい物をいくら原価がかかっているからと言って、高値で売ってはいけないと思います。日本酒フアンが減っているのも、その原因の一つだと思います。せっかく付いてきたフアンを遠ざけるのだけは、してもらいたくはありません。
日本酒という商品はワインも含めて、賭のような物でお金を払って買ってきて、封を切って、一口飲んでまずくても、よほどのことが無い限り、返品が出来ないのです。料理酒にするか、お風呂に入れるしか無いのです。消費者としては高い買物になってしまいます。それより、蔵元に裏切られた気持が何ともやりきれなく、いつまでも心が晴れません。消費者としては、2度とその蔵元の酒は買わないと言う、ささやかな抵抗しかできません。
苦言はここまで。
◇話3. 至福の時
本当においしい、ふくいくとした吟醸酒に巡り会うと、身も心もとろけそうに、天にも昇るような、幸せに包まれた時を過せる。その果報を酒の神に感謝したくなります。
嗚呼、至福の時に乾杯!
◇話4. 吟醸酒の利点
本当にイイ吟醸酒は飲み手として確実に、次の最低3点の実利的特徴があります。(1)終電車頃になると酒の臭いがムンムンして気分が悪くなるほどです。柿の腐った様な臭いと言いますが、褒められた物ではありません。この悪臭が有りません。
(2)下の話で恐縮ですが、トイレでもそうです。小便の臭いが臭くありません。
(3)これぞ、最高の特徴。二日酔いが不思議と有りません。次の日の朝、さわやかに目覚められます。
体験から来る、ウソのような本当の話です。
◇話5. 吟醸酒の例え方
吟醸酒の質のタイプを言表わすのに、私は女性に例えることが多々ありますし、この方が判りやすいのです。(と思います)
☆若々しいやんちゃ娘だから、自分で自分がまだコントロールしきれないようだ。香りは華やかだが味はまだ暴れている。 ☆味もこなれて中年女性のように、安心して飲めるね。 ☆ホレタ女房みたいに、離したくないねとか。いえいえ、今だけよと言う声も。 ☆誰からも好かれるイイ女性だね。 ☆これ、歳取りすぎていない? とかいろいろ言います。でも何となく判る気がしませんか?こーゆう言い方。
ワインでは干し草の湿った匂いとか、日なたの枯草とか天然自然の状況を指しながら、説明することが有りますが、それもまたひとつの表し方でしょう。
◇話6. 酒は酔っても味は判る
酒は酔ってくると味が判らなく成る。と言いますがこれはウソです。私は、酒の会を主催していますので、判るのですが、複数本の吟醸酒が並べられていますと、皆、好きなお酒だけを手酌で飲んでいます。すると、美味しいのは早く無くなり、そうではないのはいつまでも残り、お茶を引きます。 まるで棒グラフの様に成ります。会が終っても残るのが有りますし、見向きもされません。そのお酒が、可哀想になります。 翌日改めて飲んでも、やはりマズイ物はマズイのです。
◇話7. 味のレベルと好み
最上級の吟醸酒にもなってくると、どちらがイイかというレベルではなく、好みが左右してきます。丸ぽちゃの娘がイイとか、和服の似合う娘がイイとか、瓜実顔の美人派がイイとか、ボーイッシュな娘がイイとか、その人の好みの領域になってきます。もう一度言いますが、レベルの同じ物同士での話です。レベルが違えば、棒グラフでいつも残る組になる吟醸酒が有るように、また小学生と高校生のように差があります。芸術の世界と同じで差は歴然と有ります。同じレベルでは好みの差が出ます。嗜好品ですから当り前です。
◇話8. 質の違い
同じ蔵元同じ銘柄でもその時そのときによって質(味・香り)が違います。その年によって、出荷の時期によって、微妙に違いがあります。または大きく違います。
年による違いは誰でもうなずけると思いますが、先ず、お米の質が毎年違います。豊作の年も、凶作の年もあれば、天候等の影響で収穫されたお米の質が上下するので、どうしても、全く同質の酒には成りません。ある蔵元では米の質が変るのは当り前、そのお米を使って前年以上の高品質のお酒を造るのが、我々の当り前の使命だと、言切る所も有ります。嬉しい限りです。同じ年なのに質が違う理由には、大きく二つあります。まず最初に、大酒造メーカーでは普通酒または本醸造酒については、コンピューターを導入して、一年中いつも一定のレベルで醸造できるように管理されています。ですから、当然質は大きく変りません。また、ロット(桶)による違いもあまり有りません。その上、まだ凄いのは、ブレンドの技術です。一年中いつ飲んでも、同じというのは大変なことだと、思います。これは大メーカーの大量消費される普通酒での話。
大部分の蔵元では、そこまでの投資がまだまだ出来ませんし、吟醸酒について言えば、昔ながらの言訳のように、手作り少量生産と言う醸造方法を、今もとっています。この方法は悪いことではなく、芸術作品と同じように、杜氏のセンスと技量で、大変素晴しい物が出来る可能性を秘めています。当然、ロット(樽)ごとに味が違ってきます。この違いがひとつ目。
二つ目。同じロット(樽)の吟醸酒でも、出荷時期の違いによる質(味・香り)の違いがあります。これは楽しめる味の違いです。通常日本酒は、秋に刈取られた新米をその年の冬(寒)に醸造して、春先に日本酒として生れ出るのです。新酒と言われるように、出来立ての日本酒が最高と言われていますが、何事にも例外があるように、選び抜かれて出来上った吟醸酒では、以外と奥手の娘(酒)が多いのです。新酒の時は意外とピリピリとして、落着きの無い酒質の物でも、時間(月日)が経つに従い落着いてまろやかさが増して、イイ女盛り(の酒)となってくるのです。蔵元ではその時を見計らい、最高の状態の時に出荷するのです。ですから吟醸酒の飲み頃とは、いつも出荷された時がベストです。吟醸酒個々によって、この時期が違い、夏を過ぎてからピークになる物も有れば、秋口から冬に成る物も、年を越して春にピークを迎える、超奥手の娘もいます。でも、意外とこの奥手の娘のほうが、イイ吟醸酒に成ることが多いのです。
◇話9. 味の悪く変る話・古酒について
最高の状態で出荷された吟醸酒でも、流通段階で、温度管理が悪く、長期に売れ残ってしまえば、味は当然下降する方向に進みます。回転のイイ、または保存方法が的確な店を選んで購入するようにします。温度管理については、火入れ酒は別としても、最低限保冷庫の中で陳列されるべきでしょう。また裏ラベルを見て、製造日ではなく、出荷時期の日数経過の少ない物を選びましょう。半年も過ぎている物は論外ですし、裏ラベル(出荷日付)のない物は、?考え物です。味の悪く変る話の続き、古酒として売られている吟醸酒に旨い物があった試しがありません。いくら奥手の多いこの世界でも、1−2年が限度で、それ以上経った物はただ珍しいと言うだけで、味は保証の限りではありませんし、また高価すぎます(その値段に騙されてしまうのかも)。古酒は流通段階で古くなったのでは無く、蔵元で古くなったものです。 いくら時代が付いたとは言え、活力も無くなり、当然ひね香ブンブンの珍品吟醸酒なぞいただけません。
老酒で有名な紹興酒(餅米から造られる醸造酒)でも古ければ何でもイイとは限らず、中国政府では10年物以上経過した物は販売してはいけないと言う通達を出しています。それは10年以上経つと品質上ピークを過ぎて、下り坂を下るだけで、美酒としては10年までとの考え方です。
話は戻って、ナマ物の日本酒では古酒はいただけません、授業料と思って一度は騙されるのも、またオツなものかもしれません。が、賢い消費者は二度とそのような蔵元を信じなくなるでしょう。もう一度言います。買ってはいけません。必ず裏切られます。
◇話10. ひね香について
古酒、劣化した酒の最悪の香りについて、「ひね香」(=ヒネカ)があります。辞書を引くと、ひね=陳、ふるくなること。売れ残ること。また、その物。古くなった穀物や野菜。特に、前年以前に収穫した穀物。ひねごめ。と出ていますが、私はここでは、歳を重ね気心が、ひねてくるとか、ひねくれ者とか言う「ひね」と同義語だと思われてしょうがありません。 漢字では”老香”と書きますが、しゃれた感じを与えた字をあてて、逃げている蔵元さんもいますが。どちらにしろ、いい意味ではありません。
皆さんもこの香りは既にご存じのはずです。中国酒で老酒(ラオチュウ)がありますし、紹興酒も同じ老酒ですが、この香りが”ひね香”です。ピークを過ぎて活力が無くなり劣化してくると、「私は古くなった酒ですよ」と、酒自身がアピールしてくるのです。日本酒の中にはこのひね香がする物を、消費者の無知につけ込んで、堂々と大手を振って売られています。日本酒は昔からこうだったと高言する強者もいます。少し前の話、このひね香のするお酒を、堂々と飲屋さんに卸し上級品として請求したのですが、骨のある飲屋さんは詐欺だとして支払を拒否、灘の蔵元は裁判に訴えたのです。裁判所では飲屋さんのその言分を全面的に認め請求金額の減額を認めたのです。この時、蔵元の反対意見として、「古い物も売らないと採算が合わないし、昔から業界の実状だった」とのこと、大変業界だけの都合のいい考え方だと思います。古い物を売るときは、社会常識としてバーゲン価格または捨値価格で処分するのが常識ですし、良識あるメーカーでは廃棄処分すらします。その上、上級品として販売するとは、なんたることでしょう。また、昔からそうだったとは、「あいた口がふさがらない」、「恥の上塗り」、とはこの事です。
もう少し消費者のことを考えないと大変なことになりますよ。日本酒のレベルの低さを証明する一つの事柄ですが、若者は先入観がないだけ、この劣悪さを本能的に感じ取り、日本酒から遠ざかっているのです。どんな商品でも良い物・本物を提供できなければ負けてしまいます。
振返って、当然吟醸酒ではひね香が有っては成らない香りです。理由のいかんを問わずこの香りがする物は下の下、最低の品質の日本酒です。
しかし、残念ながら一部の物にこのひね香が認められます。この香りがする酒にはクレームを付けてどんどん、小売店、蔵元に報告して善処してもらいましょう。その応対によって、蔵元の姿勢を判断し、次の購買時のヒントとしましょう。蔵元も消費者の意見をくみ入れ、どんどん勉強して最良の商品を開発して、日本酒全体のレベルアップをして下さい。お願いします。ひね香の他に、”つわり香”があります。これはツワリの時ご飯を炊くときのムッとするような、ご飯が古くなってムレた様な、またはプロセスチーズの封を切った時のムッとするような悪臭もあります。男には判らないと言わず、想像して下さい。これもひね香同様絶対あっては成らないものです。
この香りの元は”火落菌”(ひおちきん)が原因だとされています。この細菌は日本酒だけに生育し、進行すると白濁してきます(白濁沈殿だけの時もある)。あわせて、酸味が加わり、つわり香がしてきます。当然ここまで進むとまずくて飲めなくなります。ただこの菌は熱に弱く、加熱処理した日本酒には見られない現象で、今では生酒独特のものです。しかし過去には杉だる等を使用していた為、加熱処理がうまくいかず、被害が多々あったと言われています。白ボケ(しろぼけ)について
火入れした清酒は、程度の差はあっても、貯蔵中に次第に透明度が悪くなってくるのが普通で、極端な場合には白濁します。これを蛋白混濁あるいは白ボケといいます。その原因は、麹がつくる酵素(主に糖化酵素)が火入れによって変性し、貯蔵中に凝固してくるためと考えられています。
火落菌による混濁と外観は似ていますが、この白ボケの場合は、加温すると消失し、冷却すれば再び濁る点が異なります。
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